ニュース(レポート)
パーソルクロステクノロジーに関するニュースについて紹介します。
労働力不足による建築現場の生産性低迷を救うドローン活用
2018.07.27
レポート
世界におけるドローンビジネスの市場規模は2020年に約14兆円になる(※1)とされ、日本市場においても、2024年に3700億円を超えるとされています。(※2)労働力不足による生産性に課題を持つ業界では、すでにドローンを活用することで大幅な生産性向上につなげているケースも生まれ、今後も各産業におけるドローン活用への期待が高まります。
しかし、産業化のステージはまだ初期段階。活用に興味はあるものの、「具体的に何ができるのか」「何を注意する必要があるか」「どんな人材が必要か」「保険や法規制はどうしたらいいか」など分からないことが多く、活用への一歩を踏み出せないケースが多いのが現状です。
そこで、2018年7月26日に、パーソルテクノロジースタッフとdo株式会社(以下、do)の共同主催にて、ビジネスへのドローン活用に向けたセミナーを実施いたしました。イベントでは建築・測量業界におけるドローン活用をリーディングするコマツ スマートコンストラクション推進本部 主幹 村上 数哉様にもご登壇いただき、ドローンを既存ビジネスにどのように組み込んでいるのか、また今後の展望について具体的な事例を用いてご紹介いただきました。
ドローンの可能性と各産業への導入
(高原 正嗣氏 do株式会社 代表取締役社長)
知っておきたいドローンを取り巻くルール
ドローンは浸透スピードが速く、日本でも首相官邸にドローンが墜落した出来事や伊勢志摩サミットの開催を機に、航空法や小型無人機等飛行禁止法などの国内法が整備されました。
さらに航空法には抵触しなくても、他の法律に抵触する可能性もあるので注意が必要です。
例えば「小型無人機等飛行禁止法」では、重要施設の近くでの飛行を禁止されており、国会議事堂、首相官邸、原子力事業所など、テロに遭う可能性の高い建築物の周囲は申請が必要といったルールも設けられています。
今、ドローンに関する資格免許はありませんが、国土交通省が定めた管理団体で指導を受けた方は、これらの申請が簡略化できるというアドバンテージがあります。
2020年には人口集中地区での目視外自動飛行も?
国内のドローン市場は今年度中に860億円規模まで成長するとされています。
さらに2020年には世界のドローン市場は14兆円規模に成長するとされています。これは世界のカジノ市場を超える市場規模です。
産業別には、測量、農業など、比較的導入が易いものに付いては、もっと早いペースで進んでいく予定です。
ドローン活用事例
ドローン活用されるシーンは、これまでの業務を効率的に置き換えるものと、新たな価値を生み出せるものの2種類があります。
新たな価値としては、大雨・土砂崩れなど、ドローンなら人やヘリが行けないところまで行くことができるようになったという事です。
また、農薬散布などの事例は有名ですが、それまで数時間かかっていた作業が短時間で行えるようになったり、点検などの業務に置いては、人間が対応するよりも緻密な確認を実現することができるようになりました。
例えば、ある海外の航空機メーカーでは、機体点検にドローンを用いるようになりました。従来、GPSで位置管理を行ってきたドローンは屋内作業が苦手だとされていましたが、最近は超音波や赤外線センサーなどにより、対象物との距離や地上との距離を測って正確に行えるようになったことで屋内での機体点検が出来るようになりました。ドローンでデータを取ってPCで解析することで、精緻に点検が出来ます。
ある電力会社では、広大な土地で行われる太陽光発電所において、発電パネルの点検を、赤外線のカメラを搭載したドローンで行うようになりました。それにより、人間が4時間かけていた作業が1時間でできるようになりました。
損害保険会社では、損害調査にドローンを活用し、事故現場などに人間の代わりにドローンが行き始めています。
このように成果が出始めている業界がある一方で、まだまだ産業側にはドローンの知識が足りず導入が進んでいないのが現状です。
コマツが創る未来の建設現場 ~ドローンによる測量業務支援~
(コマツ スマートコンストラクション推進本部 主幹 村上 数哉 氏)
労働力不足が深刻な建設業界
建設業界では、オリンピック需要でニーズが高まる中、技能労働者の高齢化による離職や若年労働者の入職率低下に伴う労働力減少が大きな課題となっています。2015年4月には、安倍内閣の未来投資会議で「i-Construction」という取り組みを行い、建設現場の生産性を20%向上させると明言しました。
そもそもなぜ建設業界が労働力不足になっているのかというと、下記の様なことが挙げられます。
建設業界は、ピーク時は685万人の労働力が、現在では25%減の500万人。
そのうち技能労働者は同455万人→331万人。さらに減少して行くと考えられ、非常に深刻な人材不足に陥っているわけです。
ドローンで建設現場の生産性向上へ
そこで取り組んでいるのが「i-Construction」です。
i-Constructionとは建設生産プロセスを3Dデータでつなぎ、すべてのプロセスを効率化するものです。
熟練した職人の技術が必要だった測量作業も、3D設計データに沿って建機が行えるようになったことで、これまで30日かかっていたものがドローンでやると3日で終わるようになり、劇的な小人化が実現しました。i-Constructionの流れは今後も進み、3D測量の流れはこれからも増えてくる。
測量業界を取り巻く状況
しかし、測量業界も建設業界と同様の課題があり、深刻度はもっと高い。
測量事業登録事業者は、ピーク時の14万社より2万社も減っています。
今後は3D測量の事業化に向けての取組が必要となりますが、測量業者のほとんどは中小企業が中心。
3D測量に対応しなければならないと分かっていても、「ドローンは高額」「ノウハウを持った瞬間から陳腐化が始まる」「ドローンは持っているけどi-construction対応の仕方が分からない」といった壁がある訳です。
そこで、コマツが保有するICT施工の実績とシェアにより、ドローンレンタル、ドローン測量講習会サービス、測量アプリのご提供などを行い、3D測量に関わる人を増やすことで、建設現場の生産性向上を加速化させていきたいと考えています。
パーソルテクノロジースタッフとdoではドローン分野の専門スキルを有した人材を育成しておりますが、個人・チーム単位で派遣することで、各産業におけるドローン技術の活用促進させ、企業の生産性向上に向けた課題解決に取り組んでまいります。
※1 PwCプレスリリース
※2 インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書2018』
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