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パーソルクロステクノロジーに関するニュースについて紹介します。

レポート
検査ラインを止めない、高速ビジョン技術「ViSCUITS」が変える精密外観検査
~検査滞留をなくす、新しい製造現場とは~

日本の労働力人口は減少局面に入って久しく、2035年には384万人もの不足が見込まれています※1。これだけの規模になると、もはや「人を増やす」発想では追いつきません。一人ひとりの生産性をどう上げるか──。GDPの21%を担う製造業にとっても、この問いは避けて通れない局面です。

その答えのひとつとして、パーソルクロステクノロジーは、高速振動鮮明画像取得技術「ViSCUITS(ビスケッツ)」を開発するとともに、これに関して、東京大学大学院情報学環 山川研究室と高速・柔軟ロボティクス技術に関する共同研究を実施しました。本技術は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する「NEDO Challenge 製造業DX」(第5弾)のスクリーニング審査を、60社超の応募から最終プレゼン大会出場枠18社の一つとして突破。2026年5月27日、東京・ベルサール汐留で開催されたプレゼン大会に登壇しました。今回は、コンテストでプレゼンを行ったパーソルクロステクノロジー 米津 真之介(事業開発本部 新規事業開発部)から、新技術ViSCUITSについて解説します。

※1 参照:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2035」(2024年10月17日発表) https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/roudou2035.pdf

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NEDO Challenge 製造業DX(第5弾)での米津によるプレゼンの様子

見えない最大のボトルネック

コンテスト出場が決まった当初、本プロジェクトを主導するパーソルクロステクノロジーの米津 真之介(事業開発本部 新規事業開発部)のもとには、「精密外観検査って、製造の工程なの?」という声が寄せられることが少なくなかったとい言います。

外観検査は製造工程の最後を担う、品質を決定づける最重要工程です。理想は全数チェック。けれども現場では、それがほとんど実現できていません。とりわけ中小企業の製造現場では、検査員が顕微鏡を抱え、目視で全数を確認するしかない状態が続いており、検査しきれずに滞留する「検査滞留品」が工場の床面積をかなり占有しているケースも少なくありません。

しかも、その検査員のすぐ隣では、プレス機が稼働しています。ガシャン、ガシャンと打ち付ける振動の真横で顕微鏡をのぞき、目を凝らす。そのようなマイクロレベルの検査を、振動がある現場でこなしていくのは、不可能に近い。これが日本の中小企業における製造現場の実態です。

検査が「工程」として扱われづらかったのは、自動化が極端に難しかったからにほかなりません。3次元振動と並進運動(ランダムな揺れ)が同時に起きる中で、高倍率の鮮明な画像を得るのは原理的に困難で、結果として「人がやるしかない」工程として固定化されてきました。パーソルクロステクノロジーは、この「見えない最大のボトルネック」に切り込もうとしています。

「動いて、止まって、待って、撮る」を、「動きながら撮る」に変える

製造業における工場の自動化はすでに進みつつあります。しかし、検査ラインに目を凝らすと、ロボットは依然として「動いて、止まって、待って、撮る」を繰り返しているのが実情です。この「止まる」「待つ」を排除できれば、生産性は跳ね上がります。
高速ビジョン技術「ViSCUITS」は、まさにパラダイムシフトをもたらします。3次元高速振動の上でも、対象物が高速で回転していても、鮮明な画像をリアルタイムで取得できます。従来約6秒かかっていたタクトタイムを約2秒まで短縮し、生産性は実質的に倍増する計算です。

reports_20260704_02.jpg動く→止める→待つ→撮るを繰り返す現在のフローを省工程化し高速化することで、生産性を2~3倍向上させることが可能

ViSCUITSの威力を象徴するのが、製造大手複数社との共同実証でした。現在、歯車やモーターは「目視による外観検査」か、自動化されていたとしても「止めて撮る外観検査」が主です。そのような中、パーソルクロステクノロジーでは「動きながら撮る外観検査」を提案し、複数社とPoCを進めてきました。
顧客先でのPoCでは現場の技術者から「これ、すごく見えるんですね…!」と声が上がったとい言います。「人の目の方が見えづらいなんてことがあるんだ」──。そこから、量産に向けた共同開発が始まっています。
技術スペックを並べた資料よりも、現場での一瞬の体験がすべてを語る。これがViSCUITSの強みです。

0.5ミリ秒のシャッターと、眼球と同じ原理の高速オートフォーカス

ViSCUITSの中核は、3つの要素技術で構成されています。

一つ目は、露光タイミングのズレが生じないグローバルシャッター方式のCMOSセンサーカメラを使用し、絞りを全開放かつ最短0.5ミリ秒の露光で超高速撮影を行う方法です。一瞬の露光で得た低露光の画像は、後処理でゲインを補正(電子的に明るさを補正)することで、鮮明な静止画像として再現します。

二つ目は、液体可変焦点レンズによる高速オートフォーカスです。電圧をかけて液体を変形させることで焦点距離を瞬時に変える仕組みで、構造としては人の眼球と同じ原理です。一般的なカメラのモーター式オートフォーカスとは比較にならないスピードで、ピント合わせに追従できます。

三つ目が、2軸ミラーによる視線の高速制御。光の角度をミラーで動かすことで、被写体ブレを実質的に消し去ります。これにより、3次元振動下でも対象を「追いかけ続ける」ことが可能になります。
そして、これらの要素技術の上に乗っているのが、今回開発した鮮明度判定アルゴリズムです。1000分の1秒の単位で画像の鮮明度を数値化し、しきい値を超えた鮮明な瞬間だけを切り出してAIに渡します。絶対的鮮明画像を使用しAI検査することで認識精度が向上するほか、絶対的鮮明画像のみを使用する前提で機械学習するため学習工数を削減することもできます。

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同一スペックのカメラを用いて比較を行った。従来手法:露光時間 2ミリ秒で撮影、ViSCUITS搭載:露光時間 0.5ミリ秒で撮影。
ViSCUITSを搭載したカメラでは、撮影画像を高速に判別し、不要な画像を取り除くことで、鮮明な画像のみを表示することが可能。
また高倍率化にも対応している

わかりやすく表現すると、隣り合うピクセルのグラデーションを読むことで鮮明度を数値化しています。鮮明な画像なら輪郭は「黒・黒・黒・白・白・白」と切り替わりますが、被写体ブレやピンボケが発生すると「黒・黒・グレー・グレー・グレー・グレー・白・白」となだらかになります。この差分を即座に数値化することで、「鮮明か否か」をリアルタイムで判定しているのです。

現在、精密外観検査のDXが進んでいる現場であっても、撮影後の行程でAIに渡される画像が鮮明か否かまでは制御できていないのが実情です。AIは画像全体の特徴量を数値化しているため、ブレやピンボケが少しでも発生するとその特徴量が大きく変わり、信頼度スコアにばらつきが生じます。ViSCUITSでは鮮明度がしきい値以上の画像のみをスクリーニングし「絶対に鮮明な画像」だけをAIに渡すことができます。同じAIモデルでも検査精度が安定して高くなるのは、このためです。

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従来手法とViSCUITSによる画像の信頼度スコアを比較したグラフ。
ばらつきの幅に注目するとViSCUITSではほとんどばらつきがないことが見て取れる

秒速30mmから音速まで。分解能とレトロフィット導入の柔軟性

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NEDO Challengeの会場に実際に展示したViSCUITSを搭載した装置。
この装置では振動や回転を伴うギアの精密外観検査を正確に行えることを参加者に見せた

ViSCUITSは「測れる速さ」のレンジが広いことも、強みのひとつです。

高速視線制御を使わない最小構成では、秒速40mm(分解能:1ピクセル20マイクロメートル)程度の対象まで対応。一方、高速視線制御と液体可変焦点レンズを組み合わせたフルスペック構成では、時速300km、研究では音速まで対応可能と出ています。製造業の現場で見れば完全にオーバースペックですが、これが「お客さまの対象物と速度に合わせて構成を組み立てられる」という柔軟性の根拠になっています。

導入時のハードルが低い設計もポイントです。既存の検査ラインに対しては、高速カメラと制御ソフトを追加するレトロフィット導入が可能で、既存のロボットや搬送ラインをそのまま活かせます。新規ライン立ち上げの場合でも、専門部隊が伴走し、装置設計から一貫してサポート可能です。

精密外観検査は、ほぼすべての製造業で行われていますが、その違いは「分解能」にあります。食品業界では1〜2mmで十分なのに対し、自動車部品では20マイクロメートル、半導体ではナノレベルが求められます。ViSCUITSは現在、1ピクセル4マイクロメートルまで対応しており、自動車部品やアルミ鋳造品の領域に強みを持っています。検出対象は、クラック・欠け・バリ、そして鋳造品内部の空洞である「巣」など、製造現場で品質を左右する微細な不良が中心です。

▼動画「ViSCUITSが実現する未来の工場」
https://youtu.be/3B9HQmXqhRw?si=dZgb4GPsDnqadVOv

属人化された技は残し、形式知化できるものはロボットに

「属人的な部分は属人的なまま残して、日本をもう一度、ものづくりの世界一にしたい」。本プロジェクトの開発を主導する米津は、そう語ります。

近年は「属人化を形式知化せよ」が合言葉のように語られます。しかし、形式知化された瞬間に、日本のものづくりが持っていた強みは失われる──。米津はそう考えています。だからこそ、外観検査のように形式知化できる工程はロボットに任せ、人間にしかできない属人的な技を伸ばす方向に振り切るべきだ、というのが本プロジェクトの設計思想です。

製造業に必要なのは、自動化、効率化、生産性を向上させることで、人が向き合うべき仕事を選び直すことなのかもしれません。検査員がプレス機の真横で顕微鏡を抱え続ける光景を終わらせる代わりに、ロボットには真似のできない属人的な技に、人の集中を戻す。

動きながら、止まらず、見る。ViSCUITSが描く「止まらない工場」の起点は、製造業の現場ですでに動き出しています。

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共同研究を実施した研究者およびViSCUITS開発に携わったパーソルクロステクノロジーのメンバー

写真右から順に

<共同研究を実施した東京大学大学院情報学環 山川研究室>
山川 雄司氏

<ViSCUITS開発に携わったパーソルクロステクノロジーのメンバー>
藤岡 州次(ソリューション本部 スマートマニュファクチャリング推進部 企画推進G マネージャー)
鵜飼 建佑(第2電子・制御設計本部 第1設計部 2G アシスタントマネージャー)
米津 真之介(事業開発本部 新規事業開発部)
土屋 諒司(第2電子・制御設計本部 第1設計部 2G)

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