コラム

WMS(倉庫管理システム)とは? 機能や導入メリット、選び方について

DX推進・IT活用

目次

    「倉庫作業の効率化を実現したいが、何から手を着けるべきか迷っている」。そのようなときには、WMSの導入からはじめるとよいでしょう。

    この記事では、WMSとは何か、WMSが注目される背景や主な機能、導入の方法やメリット、関連用語との違い、事例などをご紹介します。

    倉庫内業務に活用されるWMS(倉庫管理システム)とは?

    WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)とは、入荷、保管、ピッキング、梱包、ラベル管理、出荷など、倉庫に関するさまざまな作業をリアルタイムで管理できるシステムです。導入することで煩雑だった倉庫内作業の効率化や正確性の向上が実現します。

    また、WMSの特徴は現場レベルにまで踏み込んで倉庫内業務を改善できる点にあります。例えば、「誰がどの棚を、どの順番で、どの通路を進んでピッキングするのか」についてデータから最適と予想される手順を導き出せるなど、自社工場の現状に即した生産性の向上が目指せます。

    WMS(倉庫管理システム)が注目されている背景

    WMSに注目が集まる背景には、大きく3つの要因があります。

    物流ニーズの複雑化

    近年、ECサイトの需要増加により、物流現場のニーズも複雑化しています。化粧品1つのような小口の配送が頻繁におこなわれ、返品対応にも追われるなど、従来型の倉庫管理では対応が難しくなりつつあります。

    早期配送を希望する顧客の要望も高まるなか、在庫管理や発送の効率化・高速化を実現できるWMSは、こうした課題の解決策として期待されています。

    倉庫現場の人材不足

    2024年12月の一般社団法人日本倉庫協会の報告によれば、倉庫の現場作業員の主観的な人員不足率は7.8%であり、今後5年で15.9%にまで拡大すると予想されています。2024年問題によりドライバーの確保も問題となるなか、物流現場の混乱は増しており、WMSを駆使した抜本的な改革の重要性が高まっています。

    出典:一般社団法人日本倉庫協会「営業倉庫の現状と課題について」

    DX化の推進

    2023年6月に閣僚レベルでおこなわれた「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」では、「物流革新に向けた政策パッケージ」として物流DXを推進する方針が確認されました。議論のなかでは、自動配送ロボットやドローン物流などのほか、自動倉庫の重要性にも触れられています。

    そのような情勢のなか、2025年現在、WMSツールの導入時にはIT導入補助金など国の支援を受けられるケースもあり、利用をはじめるのに適した状況といえます。

    参考:IT導入補助金制度概要 | IT導入補助金2025|独立行政法人中小企業基盤整備機構

    WMS(倉庫管理システム)の主な機能

    V字工程では不具合の発覚が遅れるほど手戻りの影響が大きいが、モデルベース開発では先に仕様書の内容をコンピューター上でシミュレーションすることで、開発の効率化を実現

    WMSとは何か、注目される背景についてご紹介しましたが、ここからはWMSの機能について、大きく5つの項目をご紹介します。

    入荷管理・在庫管理

    通常、WMSでは、倉庫に届いてから出荷されるまでの商品の所在をリアルタイムで確認できます。在庫数や保管場所が常に明確となり、物流倉庫の重要指標である棚卸誤差率(実際の在庫数と帳簿上の在庫数の差)を下げることが可能です。

    受注処理

    WMSでは出荷依頼がシステムによってリアルタイムで受け取れ、ピッキングリストも自動生成されます。そのため、電話で出荷内容を聞き、手作業で紙のリストを作る、といった手間のかかる作業を削減できます。処理速度の向上はもちろん、聞き間違い・書き間違いといったヒューマンエラーの防止にもつながります。

    ピッキング・梱包支援機能

    WMSはピッキングや梱包の支援もおこないます。荷物を用意する順番や通るべき通路などをシステムが自動で提案してくれます。また、商品に対する最適な梱包材の選択なども担ってくれます。

    出荷管理

    WMSは、配送ラベルの発行や運送業者への情報共有といった出荷管理も担います。自動的に出荷の情報がデータ化されることは、在庫管理の精度を高める観点から有効です。共有漏れやミスを防げるため、現場の担当者同士のトラブルも減らせます。

    労務管理

    ツールによっては倉庫ではたらく従業員の労務管理にも活用できます。一人ひとりの得意作業や労働時間などを把握し、最大限のパフォーマンスを引き出せるようにタスクを割り当ててくれます。このような労務管理ははたらきやすい職場の実現につながり、ひいては人材の安定的な確保にも結びつきます。

    WMS(倉庫管理システム)を導入するメリット

    続いて、WMSを自社に導入するメリットを見ていきましょう。

    現場作業の効率化

    WMSの豊富な機能は、現場作業の効率化に役立ちます。ピッキングやラベル管理などの多様な作業が自動化されることで、意思決定で迷う時間を減らせます。担当者を問わず一定の速度で業務をこなしやすくなり、属人化を防げる点も魅力です。

    リアルタイムな在庫管理の精度向上

    前述のとおり、通常のWMSでは、倉庫に届いてから出て行くまでの商品の所在をリアルタイムで管理できます。これにより、棚卸誤差が削減されるほか、「倉庫のどこかに眠っているうちに使用期限が過ぎてしまった」というような在庫ロスを減らすことも可能です。

    コストや廃棄物などの削減

    在庫ロスを減らすことは、倉庫に関するさまざまなコストの削減にもつながります。例えば、同じ人員、同じ時間でより多くの荷物を取り扱えるようになれば、出荷一件あたりの人件費が削減できます。

    また、賞味期限や使用期限が近づいているものから優先的に出荷できるようになれば、廃棄物も減少します。

    ヒューマンエラーの削減

    WMSでは、荷物をRFIDで管理して取り間違いの際に警告を出すなど、どうしても必要な手作業におけるミスを減らす仕組みも導入できます。多くの作業を自動化できる点と併せ、ヒューマンエラーを減らすことが可能です。

    顧客満足度の改善

    ここまでご紹介したメリットにより、WMSの導入後は迅速かつ正確な倉庫作業が可能となります。従来よりも大量の荷物を、早く、正しく出荷できるようになり、取引先からの評価の向上や契約の継続が期待できます。

    WMS(倉庫管理システム)の導入方法

    WMSは一般的に以下のような流れで導入されます。

    1. 現状分析と課題抽出:棚卸誤差率や在庫ロスの数値把握、現場からのヒアリングなど
    2. WMS導入目的の明確化:「在庫ロスをなくしたい」「人材不足に対応したい」など
    3. WMSの選定:ツールの強み・弱みの比較、自社と類似した企業の導入事例の確認
    4. システム会社との打ち合わせ:導入時期や予算、手順やアフターフォローなど
    5. 試験導入:一部荷物の管理をRFIDに置き換えるなど段階的な試用
    6. 社員教育:本稼働を見据え、スムーズな運用を実現するための研修実施
    7. 本稼働

    物流DXの一種であるWMSは、導入に際してITの知識が求められます。IT人材の確保が難しい場合は外部の支援サービスを受ける方法もあります。

    WCSやERP、在庫管理システムとの違い

    WMSと混同されやすい関連用語との違いも理解しておきましょう。

    WCSとの違い

    WCS(Warehouse Control System:倉庫制御システム)とは、倉庫内の設備や機器を管理するシステムです。例えば、ロボットや無人搬送車などを制御・監視するシステムを指します。WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)が人の作業の管理や効率化を担うのに対して、WCSは設備や機器を対象としている点で異なります。両者は連携して動作するものです。

    ERPとの違い

    ERP(Enterprise Resources Planning:企業資源計画)とは、人・物・金・情報といった企業リソースの効率的な分配を目指す考え方、もしくはその実現のためのツールのことです。効率化を目指す考え方は同じですが、WMSが倉庫を対象とする用語であるのに対して、ERPは企業全体を見ている点で異なります。

    在庫管理システムとの違い

    在庫管理システムとは文字どおり、企業が持つ商品の在庫の管理を担うシステムです。WMSが倉庫内の管理・改善を主題とするのに対して、在庫管理システムは倉庫にない在庫(例:将来の需要予測など)も取り扱う点で異なります。また、WMSが現場の労務管理として荷物だけでなく人を扱うケースがある点も大きな違いです。

    TMSとの違い

    TMS(Transport Management System:輸配送管理システム)は、倉庫から出荷された荷物が顧客のもとに届くまでを管理するシステムです。トラックの運送管理や配車計画の作成支援、庫内の温度管理など、輸配送を幅広く支援します。WMSとは、入荷から出荷までを管理する担当領域が異なります。WMSのあとを引き継いで活躍するのがTMSです。

    OMSとの違い

    OMS(Order Management System:受注管理システム)は、商品の注文に関する情報の管理を目的としたシステムです。主に以下の4種類の機能で構成されています。

    • 顧客対応(例:ECサイトの注文時に配送予定日のメールを自動で顧客に送信する)
    • 在庫管理(例:どの倉庫にどの在庫があるのか管理する)
    • 出荷管理(例:キャンセル情報や注文変更情報、現在の状況などを管理する)
    • 商品ページ管理(例:在庫がなくなった商品ページを品切れ表示に変更する)

    WMSとOMSは、倉庫内を管理するか受注全体を管理するかの点で異なります。

    WMS(倉庫管理システム)の業界事例

    WMSは、ここまでご紹介してきた物流以外にもさまざまな業界で導入されています。

    小売業界

    小売業界では、使用期限も性質も異なる多様な商品を取り扱います。ある品物は冷暗所に置く必要がある、ある品物は3日で消費期限が切れるため必ず期限の短いものから出荷すべきであるなど、それぞれに適した管理が必須です。WMSによるシステマチックな管理は、このような個別対応を容易に可能にします。

    製造業界

    製造業界では、原材料の適切な管理が生産ラインの稼働率を左右します。在庫を正確に管理し必要に応じて工場へ届けられなければ、製造が止まるなど大きな損失となります。WMSを活用すればこのような損失を避けられるほか、完成済みの製品を確実に保管しておくためにも重宝します。

    WMS(倉庫管理システム)の導入で倉庫業務の効率化を目指そう

    WMSは、倉庫内の管理全般を担い、作業の効率化を実現するシステムです。人材不足や物流ニーズの複雑化など、倉庫を巡る多様な課題の解決策となります。

    しかし、WMSの導入は大規模な工場改革となることから、特に社内にIT人材が不足している場合はスムーズに導入できないケースもあります。そうした課題をお持ちの際は、ぜひパーソルクロステクノロジーにご相談ください。

    サービス:WMS導入支援サービス

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