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ITSSとは?7つのレベルと企業の活用メリットを解説
近年、IT の進化に伴い、ビジネス環境や日常生活は急速に変化しています。今後も企業が競争力を高めていくには、自社のサービスやプロダクトの進化に必要なIT を業務に活かせる人材の獲得が欠かせません。
本記事では、IT人材のスキルを客観的な指標として示した「ITSS」における7つのレベルと11の職種のほか、企業が活用するメリットについてご紹介します。
関連お役立ち情報
ITSSは「IT Skill Standard」の略で、日本語では「ITスキル標準」とも呼ばれます。IT領域の人材を教育・訓練する際の指標として、経済産業省が2002年に策定・公表しました。
ITSSでは、IT領域を11の職種と35の専門分野に分け、それぞれに7段階のレベルを設定しています。なお、ITSSと同様にスキルを測る指標である「UISS」「FTS」「CCSF」の特徴は下記のとおりです。
・UISS(情報システムユーザースキル標準)
UISSは、一般企業が日々の業務でITを活用するにあたって、準備すべき機能とシステム担当者のタスク、およびそのレベルを示すものです。ITシステムを活用するユーザー側のスキルや知識を表した基準指標となっています。
・ETSS(組込みスキル標準)
ETSSは、組み込み系ソフトウェア開発に必要なスキルを体系化し、基準化しています。主な対象は、組み込みエンジニアです。
・CCSF(共通キャリア・スキルフレームワーク)
CCSFは、ITSS、UISS、ETSSを一貫して管理し、柔軟に活用するためのフレームワークを指します。
なお、2017年4月には、ITSSで情報システム部門に携わってきた人材が「セキュリティ領域」や「データサイエンス領域」の知識を新たに習得する際の指標として「ITSS+」が策定されました。
ITSS策定の背景
ITSSが策定された当時、ITの急速な進化に伴って、日本企業のビジネスモデルも大きく変化しつつありました。ハードウェア・ソフトウェア、さらには戦略としてITが活用される中で、企業が顧客のニーズに合った事業展開で競合優位性を獲得していくには、専門性の高い優秀な人材の獲得・育成が欠かせません。
ITSSは、高度IT人材を獲得・育成するためのロールモデル、およびロールモデルのキャリアビジョンにおいて段階ごとに身につけていくべきスキルを明示しているため、その人物のスキルや専門性を可視化することが可能になりました。
ITSSの7段階のレベル
ITSSでは、業務内容に必要な知識やスキルのレベルが、7段階に分けて規定されています。レベル1~7の基準は次のとおりです。
レベル1(エントリ)
レベル1は、IT業界で仕事をする上で、最低限の基礎知識を持っていることを示します。希望するキャリアパスを実現するためには、体系的な学習と実践が求められるレベルです。
レベル2・3(ミドル)
指示に沿って要求された作業を実行できるのがレベル2、要求に応じた作業をすべて一人で実行できるのがレベル3です。キャリアパスに必要なスキルや知識をさらに研鑽し、習得していくレベルです。
レベル4~7(高度IT人材)
1つの職種の1つの領域において、高い知識と技術を有するのがレベル4~7です。
レベル4で専門分野の確立、レベル5で社内のハイエンドプレイヤー、レベル6で国内のハイエンドプレイヤー、レベル7は世界で通用するプレイヤーのイメージです。
ITSSにおける11の職種
ITSSでは11の職種に対し、先述の7つのレベルが領域ごとに設定されています。11の職種は下記のとおりです。
・マーケティング
マーケティングは、市場調査や分析によって、商品やサービスの販売戦略を考える仕事です。ITSSでは専門分野を「マネジメント」「販売チャネル戦略」「マーケットコミュニケーション」の3つに分類しています。
・セールス
セ―ルスは、営業活動によって商品やサービスを販売する仕事です。ITSSでは専門分野を「訪問型コンサルティング」「訪問型製品」「メディア利用型」の3つに分類しています。
・コンサルタント
コンサルタントは、企業や組織の経営課題を解決へと導く専門家のことです。ITSSでは専門分野を「インダストリ(産業)」と「ビジネスファンクション(業務)」の2つに分類しています。
・ITアーキテクト
ITアーキテクトは、企業や組織の経営戦略をもとに、必要なシステム全体を構築する仕事です。ITSSでは専門分野を「アプリケーションアーキテクチャ」「インテグレーションアーキテクチャ」「インフラストラクチャアーキテクチャ」の3つに分類しています。
・プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントは、企業や組織のプロジェクトをマネジメントする仕事です。ITSSでは専門分野を「システム開発」「ITアウトソーシング」「ネットワークサービス」「ソフトウェア製品開発」の4つに分類しています。
・ITスペシャリスト
ITスペシャリストは、企業や組織のプロジェクトにおいて技術面を支える仕事です。ITSSでは専門分野を「プラットフォーム」「ネットワーク」「データベース」「アプリケーション共通基盤」「システム管理」「セキュリティ」の6つに分類しています。
・アプリケーションスペシャリスト
アプリケーションスペシャリストは、企業や組織の業務上の課題を解決するアプリケーションを手掛けるエンジニアです。ITSSでは専門分野を「業務システム」と「業務パッケージ」の2つに分類しています。
・ソフトウェアデベロップメント
ソフトウェアデベロップメントは、ソフトウェア製品の企画から開発までを手掛ける仕事です。ITSSでは専門分野を「基本ソフト」「ミドルソフト」「応用ソフト」の3つに分類しています。
・カスタマーサービス
カスタマーサービスは、顧客へのサポート業務を行う仕事です。ITSSでは専門分野を「ハードウェア」「ソフトウェア」「ファシリティマネジメント」の3つに分類しています。
・ITサービスマネジメント
ITサービスマネジメントは、顧客のニーズに対してITサービスを提供するマネジメントを行う仕事です。ITSSでは専門分野を「運用管理」「システム管理」「オペレーション」「サービスデスク」の4つに分類しています。
・エデュケーション
エデュケーションは、専門技術を活用し、研修カリキュラムなどを実施し人材育成を行う仕事です。ITSSでは専門分野を「研修企画」と「インストラクション」の2つに分類しています。
■ITSSのキャリアフレームワークの例
参照:独立行政法人情報処理推進機構「ITスキル標準センター:ITスキル標準概要」
関連お役立ち情報
取得しておきたいITSS関連の資格
ITSSにおけるレベル向上や、初心者からIT業界での活躍を目指すなら、下記のような国家資格への挑戦がおすすめです。
・ITパスポート試験
ITパスポート試験は、ITSSのレベル1に相当する資格で、社会人として持っておきたいIT の基礎知識の習得が証明できる資格です。企業からの信頼性は高く、ITへの知見があることを証明するためにも取得しておくといいでしょう。
・基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、高度IT人材を目指すための知識やスキルを習得できます。ITパスポートの後にチャレンジする人が多く、さらなるレベルアップを図るなら、応用情報技術者試験へのチャレンジがおすすめです。
・応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、技術から管理、経営まで、幅広い知識と応用力が身につきます。
なお、ほかにも専門性の高い試験には、「ITストラテジスト試験」「システムアーキテクト試験」「プロジェクトマネージャ試験」「ネットワークスペシャリスト試験」「データベーススペシャリスト試験」「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」「ITサービスマネージャ試験」「システム監査技術者試験」があります。
ITSS導入のメリット
企業がITSSを導入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。考えられるものには下記の3つがあります。
スキルの可視化
ITSSを導入することで、既存人材のITスキルが数値化され、客観的にレベルを測ることができます。これによって、自社が目指すレベルに対して不足している経験やスキルを明確な根拠にもとづいて提示でき、ギャップを埋める効率的な育成や採用につながります。
従業員の自発性向上
ITSSによってみずからのITスキルを把握することで、従業員自身が身につけるべきスキルや経験を理解して行動することが可能になります。各々の自発性が上がり、組織が活性化するでしょう。
人材の活用
ITSSを導入して既存従業員のITスキルを可視化できると、埋もれていた人材や活用されていないスキルを発見できる可能性が高まります。適材適所の配置を実現し、人材を適切に活用することも可能になるでしょう。
ITSSを企業が導入する際の手順
実際に企業がITSSを導入する場合、どのように進めていけば良いのでしょうか。一般的な手順についてご紹介します。
1. 目的を明確にする
ITSSを導入する目的は、企業によって異なります。自社の戦略にもとづいて、必要なスキルと社員にとってのメリットを言語化しましょう。
<目的の具体例>
・既存人材をより良く配置してモチベーションを高めたい
・社員がキャリアデザインを描きやすい環境にしたい
・自社の事業成長に必要な人材を把握し、適切な採用計画を実行したい
2. 社内プロジェクト化する
ITSSの導入を進める段階では、従業員に当事者意識を持たせることが重要です。社内プロジェクト化して、経営陣と従業員が共に取り組むようにするといいでしょう。
3. 運用フローや環境の整備
従業員のスキルは、常に一定ではありません。個人の努力や、入退社によって増減があるため、定期的に見直して更新する運用フローを作ります。現場の変化をリアルタイムで吸い上げられるよう、人事だけでなく全社横断的に取り組むことが大切です。
経営戦略に沿ってITSSを活用しよう
ITSSは、自社の経営方針に沿った長期的な計画にもとづいて導入・運用していくことで、保有する人材の能力を活かした競争力の向上を期待することができます。未来への不確実性が高まる中、企業がITSSの導入によって社員にスキル向上や資格取得を促すことは、それぞれのキャリア自律のためにも重要です。
ITSSの導入で顕在化した、自社に不足しているスキルや経験値を補うには、外部人材の活用を検討するのもおすすめです。専門性の高い人材が豊富に登録しているパーソルクロステクノロジーの「ITエンジニア派遣サービス」に、ぜひご相談ください。