【事例付き】スマートアイランドとは?推進の背景やパーソルクロステクノロジーの実証実験について

DX推進・IT活用
日本には多くの離島があります。人が生活する有人離島も多く存在しますが、近年、医療機関などへのアクセスの難しさやインフラの維持などの課題を背景に、離島での人口減少や高齢化が深刻化しています。その課題の解決となる施策が、スマートアイランドです。

この記事では、スマートアイランドの概念や活用されている技術、実証実験の具体例などを分かりやすく解説します。

目次

    国土交通省が取り組むスマートアイランドとは?

    国土交通省が推進するスマートアイランドは、行政と企業、研究機関、教育機関など、官民が連携して、離島が抱える社会課題の解決を図る取り組みです。IoTセンサーやドローン、遠隔診療システムなどの先端技術を導入することで離島特有の地理的制約を乗り越え、住民の生活の質を高めようとしています。

    また、スマートアイランドに関する施策や事例などの情報交換・共有を円滑化するため、スマートアイランド推進プラットフォームの構築も進められています。

    近年取り組まれているスマートシティとの違いは、対象となる地域や特性です。スマートシティは都市部における生活やサービスの効率化・利便性向上が主な目的とされているのに対し、スマートアイランドは、人口規模が小さく本土から離れた離島という環境で限られた資源をいかに有効活用するかに焦点が当てられています。

    スマートアイランドが推進されている背景

    スマートアイランドの取り組みには、離島を持つ多くの自治体や民間企業などが参加しています。では、なぜ近年になってスマートアイランドが大きく推進されているのでしょうか。

    有人離島で社会課題が急速に進行しているから

    日本にはおよそ1万4,120もの離島が存在し、そのうち417は有人離島です。

    現在、有人離島では、全国の都市部以上に社会課題が進行しています。離島という地理的条件が人口減少や高齢化といった問題をより加速させる要因となっているのです。

    こうした状況を放置すれば、離島コミュニティの存続が危うくなり、独自産業の衰退などの問題が全国に影響を及ぼすことにつながります。そのため、離島を日本の社会課題解決の最前線と位置づけ、先端技術を活用した実証実験の場として、スマートアイランドの取り組みが進められています。

    出典:国土交通省|スマートアイランド推進プラットフォーム

    有人離島における社会課題

    有人離島が抱える問題の背景には、離島ならではの多くの課題があります。

    少子高齢化の進行

    有人離島では全国平均を上回るペースで少子高齢化が進んでいます。若年層が仕事や利便性を求めて島外に移住しているためです。若年層の流出により出生率は低下し、高齢者の割合が人口の半数近くを占める集落も珍しくありません。

    移動や物流の制約

    離島と都市部の移動手段は船や航空機が中心となっており、移動に時間がかかることに加え、天候による欠航・運休も頻繁に発生します。急病時の搬送など、緊急時の対応が遅れるリスクがつきまとうため、疾患を抱えている方や出産を控えている方は島外に出なければいけないのが実情です。

    物流面においても、物資の輸送が定期便の運航状況に依存してしまうため、生鮮食品や医薬品の安定供給が難しい状況となっています。ECサイトによる配送も離島は対応外もしくは別料金となっている場合が多く、都市部と比べて住民の利便性が低くなっています。

    労働環境の悪化

    移動や物流の課題などを背景に機械化や省力化が進まず、特産品はあるものの量産や島外への販売ができないという離島も多く存在します。手作業に頼る場面が多く、長時間労働が常態化しているケースもあります。また、長時間労働しても得られる報酬は都市部と比較して低い傾向にあります。

    こうした労働環境の厳しさが、若者の定着を阻む要因の1つとなっています。

    労働人口の低下

    若年層が島外へ流出することで、多くの離島で労働人口の減少が発生しています。労働人口の減少は産業の衰退を招き、島内での雇用機会の減少につながります。

    また、少ない人数で産業を維持しなければならないため、労働環境の悪化にもつながります。

    経済力の悪化

    人口減少と産業の衰退により、離島の経済力は年々弱まっています。離島の人口が減り、消費者が減少すれば、商店や飲食店の経営は成り立たず、廃業せざるを得ません。

    観光業も季節や天候への依存度が大きく、オールシーズン安定した収益を確保できているのはごく一部の離島です。経済力が悪化すれば税収が減り、住民サービスの維持・向上に支障をきたします。経済力を高めるためには労働人材の確保が必要ですが、若年層が魅力を感じる雇用や収入を生み出す仕事が不足している自治体も多くあります。

    インフラコストが高い

    離島では、資材の輸送コストなどにより、道路や上下水道といったインフラの整備と維持に多額のコストがかかります。一方、インフラの利用者数は少ないため、利用者1人あたりの投資コストがどうしても高くなります。結果として、生活に不可欠なインフラの修繕が先送りされるケースも少なくありません。

    輸送コストが高い

    離島と本土間の輸送には船や航空機が必要となるケースが多いため、輸送コストが高くなりがちです。生活必需品や建築資材、燃料など、さまざまな物資の価格に輸送費が上乗せされるため、住民の生活費が高まっています。

    事業者にとっても、原材料の調達や製品の出荷にかかるコストが経営を圧迫する要因となっており、価格競争力の面で不利な立場に置かれています。

    燃料コストが高い

    離島では、都市部のような大規模な発電施設や送電網を整備することが難しいため、エネルギーコストが高くなります。暖房や給湯、調理に使う燃料も輸送コストが加わるため割高になります。再生可能エネルギーの導入なども期待されていますが、初期投資の大きさが課題となっています。

    スマートアイランドに活用される主な技術

    スマートアイランドの取り組みでは、離島の社会課題を解決するさまざまな先端技術が活用されています。その代表的な技術をご紹介します。

    ドローン

    離島における緊急対応の課題を解決する手段として、ドローンの活用が進められています。

    災害発生時には被災状況を迅速に把握し、被災者に必要な物資を届けることが求められますが、離島では人材や交通インフラなどの課題で災害対応がスムーズに進められないリスクがあります。

    ドローンを活用すれば、上空から広範囲を撮影することで道路の寸断状況や建物の被害状況を短時間で確認でき、孤立地域に緊急物資を輸送できます。災害時の対応以外にも、定置網の点検や害獣の調査・監視など、離島の産業にドローンを活用する取り組みも進んでいます。

    出典:国土交通省|スマートアイランド推進プラットフォーム|島民主導(自治)による空飛ぶドローンの実装

    AI(人工知能)

    離島の環境保全や産業維持において、AIは欠かせない技術となりつつあります。ドローンや多機能クローラ式ロボットなどにAIを組み合わせることで、人が立ち入りにくい場所での作業を遠隔地から実施できるようになりました。現在では、森林の管理や海岸線の環境調査、農地の状態監視といった業務をAIが搭載されたロボットで行う取り組みが進められています。

    また、AIとセンサーを船に搭載して自動航行を実現し、フェリーの運航時間外でも移動や輸送ができるようにする施策も進行中です。

    出典:国土交通省|スマートアイランド推進プラットフォーム|自律航行技術を活用した離島での旅客輸送および商品宅配サービス

    ICT技術

    ICT技術は、VR技術などとの組み合わせにより遠隔地に居住する人々とコミュニケーションを取るツールとして活用が進んでいます。遠隔医療や遠隔教育などのサービスも実現しており、離島であっても本土から一定のサービスを受けられる環境が整いつつあります。

    ICT技術をセンサーやカメラなどのIoT機器と組み合わせ、災害リスクが高いエリアや危険性を可視化し災害を検知するなど、災害の深刻化を防ぐ用途でも実用化に向けた検証が進められています。

    出典:国土交通省|スマートアイランド推進プラットフォーム|ICT技術を活用した防災体制の高度化・スマート化

    スマートアイランドの実証実験の事例【島根県隠岐諸島】

    国土交通省の「令和7年度スマートアイランド推進実証調査業務」において、パーソルクロステクノロジーの自動運転バスの取り組みが採択されました。

    自動運転バスの実証実験は、島根県隠岐諸島が抱える公共交通の課題を解決し、地域住民の交通インフラや観光地としての利便性を向上させるために開始しました。隠岐諸島の中ノ島から西ノ島を運航するフェリーに自動運転バスを乗船させる試験を行いました。

    この技術を実用化できれば、住民や観光客は自動運転バスに乗車したまま島内や島間をシームレスに移動できるようになります。乗り換えの手間が減り、大きな荷物を持って移動する負担も軽減されます。

    自動運転バスは、地域住民の交通アクセス改善だけでなく、観光客に利便性の高い移動手段を提供できる技術です。パーソルクロステクノロジーは、この取り組みを日本全国の離島が抱える課題に対するモデルケースとするべく、自動運転技術を活用したスマートアイランド推進に取り組んでいます。

    出典:国土交通省「令和7年度スマートアイランド推進実証調査
    出典:島根県隠岐諸島のスマートアイランド推進に向け、フェリー乗り入れを含めた自動運転バスの実証実験を開始
    出典:離島の未来を動かす、自動運転の一歩島根県隠岐諸島で自動運転バスの試乗体験会を実施〜90%以上が「満足」と回答〜

    スマートアイランドは有人離島の課題解決に貢献できる

    日本の有人離島では、少子高齢化や移動・物流の制約、労働人口の減少といった課題が深刻化しています。こうした状況を打開するため、国土交通省は、官民連携で先端技術を活用して離島の課題を解決するスマートアイランドの取り組みを推進しています。

    ドローンによる物資輸送の補完、AIを活用した遠隔での環境保全、ICT技術による遠隔医療や教育サービスの提供など、先端技術を駆使した取り組みは各地で始まっています。パーソルクロステクノロジーの自動運転バスを活用した実証実験もその1つです。

    離島での課題解決は、やがて日本全体が直面する社会問題への対応モデルとなり、持続可能な地域社会の実現に向けた重要な一歩となります。パーソルクロステクノロジーはこれからも、自動運転などさまざまな技術を活用し、地方の継続的な発展に貢献していきます。

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