コラム

LCA(ライフサイクルアセスメント)と は?実施フローとメリット、企業事例について

技術開発・ソリューション

目次

    企業が環境問題への対策を進めるにあたって最初に押さえておきたい用語が、LCA(ライフサイクルアセスメント)です。

    この記事では、LCAの意味や必要とされる背景、実施フローやメリット、導入事例や課題、関連用語との違いなどを紹介します。

    ビジネスの環境対策で重要なLCAとは?

    CA(ライフサイクルアセスメント)とは、ある製品やサービスのライフサイクルにおける環境負荷を評価する国際的な手法です。原材料の調達から最終的な廃棄、リサイクルに至るまで、製品やサービスの生涯(Life Cycle)を査定(Assessment)する取り組みを意味します。

    LCAの特徴は、製品(以降、サービスを含む)の本当の環境負荷を明らかにできる点にあります。「製造や廃棄では温室効果ガスをさほど出さないが、原材料の調達過程での排出量は甚大」といった表面上は環境に優しく見える製品を否定し、正しく地球を保護していくために役立てられています。

    LCAの導入が進む背景と必要性

    LCAは、自社が環境保護に真摯に向き合っていることを証明する方法として重要です。

    2016年発行のパリ協定を皮切りに、近年は環境保護への関心が世界的に強まっています。人々が企業に社会的な責任を果たすことを求めるなか、自社が環境を軽視していると見なされれば、それは重大なレピュテーションリスクを招きます。

    最近では、金融機関や投資家が企業の環境への取り組みを評価する動き(例:ESG投資)も浸透してきました。LCAの導入は、自社のブランド価値を高める一手にも、また守る一手にもなるものです。

    LCAの仕組みと実施フロー

    LCAは、国際的な標準規格であるISO規格(14040シリーズ)によっておおまかな枠組みが定められています。その日本版であるJIS Q 14040:2010をもとに、仕組みと実施フローをご紹介します。

    目的と調査範囲の設定

    最初のステップは、製品を評価する目的と、環境への影響を評価する調査範囲の設定です。以下のような項目を検討します。

    • 調査の理由
    • 評価結果の用途
    • 結果を伝える相手
    • 環境負荷を評価する製品の範囲
    • データ品質の要件
    • データの測定単位 など

    インベントリ分析(LCI)

    あらかじめ定めた目的や調査の範囲に応じて、関連するデータを集めていきます。このとき、システムに関係する要素として、どのような入力や出力があるか整理しながら進める作業は、インベントリ分析(LCI:Life Cycle Inventory)と呼ばれます。

    たとえば製造業において、ある製品のライフサイクル全体における環境負荷を把握するため、原材料の採掘から製品の製造、使用、廃棄に至るまでの各段階で、どれだけのエネルギーや原料を投入し(入力)、どのような排出物や廃棄物が出るのか(出力)を詳細にデータとして収集・整理します。

    具体的には、製品1単位あたりに必要な鉄、アルミ、電力、水といった資源の使用量や、製造過程で発生するCO2排出量、廃棄物の量などが対象です。

    影響評価(LCIA)

    影響評価(LCIA:Life Cycle Impact Assessment)は、インベントリ分析で算出された物質がどのような形で環境への負荷となるのか、その影響を検討する段階です。ひとくちに環境負荷といっても、温暖化や酸性雨など、引き起こされる結果はさまざまな形が考えられます。

    作業の詳細は目標や調査範囲によって変わりますが、一般的には以下の4段階が考慮されます。

    • 分類化:各項目がどのような環境問題と関係するのか分類
    • 特性化:各項目が当該問題にどの程度影響するのか検討
    • 正規化:特性化の結果を別の指標とも比較できるように加工
    • 統合化:正規化の結果を受けた総合評価

    解釈(インタープリテーション)

    最後に評価の結論や今後の改善策(環境負荷を減らす具体策)などを導き出す過程を、解釈と呼びます。

    この過程では、インベントリ分析や影響評価が当初に設定された調査目的と照らして適切か検討し、結果を活かす方法を考えます。こちらも確立した方法論はなく、具体的な手法は個々の状況により変化します。

    LCAに取り組むメリット

    続いて、LCAに取り組むことで得られる自社のメリットを紹介します。

    環境負荷の可視化による改善策の立案

    LCAでは、原材料の調達から廃棄、リサイクルに至るまで、製品のライフサイクルをめぐる環境負荷を明らかにできます。定量的な評価をもとに、自社が今どのような取り組みを進めるべきなのか、どこから改善していくべきなのかといった議論を深められます。

    サプライチェーン全体の最適化

    LCAは自社のみでなくサプライチェーン全体を見つめているのが特徴です。仕入れ、運送、廃棄、リサイクルなど、自社製品と関係する取引先で環境負荷が生じていないかを評価できます。その過程では、環境負荷の軽減はもちろん、非効率なプロセスの見直しによるコスト削減も期待されます。

    ブランド価値や企業評価の向上

    前述のとおり、LCAの導入は自社のブランド価値や評判を高めるために有効です。優れた評判は、資金調達の容易化、消費者からの共感獲得、優れた求職人材からの注目など、自社に多様な恩恵をもたらします。

    特に消費者からの共感は自社製品に無形の価値を付加することにつながり、激しい価格競争から離脱するための足がかりとなります。

    消費者の環境意識の向上

    LCAの導入は、消費者が持つ環境意識を高めること、ひいてはよりよい社会をともに作り上げていくことにも寄与します。自社が率先してLCAの成果を公表し、環境面という価格以外の新たな購買判断の指針を提供できれば、地球に優しい製品が優先して選ばれる世界に近づいていくはずです。

    LCAの導入にあたってよくあるお悩み

    LCAは責任感のある企業としてぜひ取り組むべきですが、導入過程では以下のようなハードルもあります。

    • 具体的な目的や手順、調査範囲などの設定が難しい
    • 統計や環境に関して知見のある人材がいない
    • 他業務を差し置いてLCAに取り組むだけのリソースがない など

    このようなお悩みには、外注サービスの利用も有効です。パーソルクロステクノロジーでは、LCAの導入過程を包括的にサポートするサービスを提供しています。

    サービス:LCA/CFP(製品単位のCO2可視化)

    【業種別】LCAの企業事例

    では、業界別にLCAの具体的な企業の事例を見ていきましょう。

    自動車メーカー

    ある大手自動車メーカーでは、1997年以降、自社の全自動車(および部品)に対してLCAをおこなっています。

    同社は、新製品と従来品のLCAの結果を比較することで、環境性能の向上を常に確認。また、LCAの結果はカタログなどを通じて一般に公開し、消費者が購買基準の1つにできるよう工夫しています。

    鉄鋼メーカー

    ある製鉄会社では、SuMPO EPDと呼ばれる認証プログラムを取得するためにLCAに取り組みました。

    SuMPO EPDに登録された製品は、LCAによって定量的に評価された環境情報を透明性のある形で公開でき、同じように環境保護に取り組む取引先を見つけるのに役立ちます。

    製紙メーカー

    紙容器を取り扱うある企業では、1980年代から外部に評価を依頼する形でLCAを実践してきました。

    飲料に使われる紙容器は、原材料と廃棄・リサイクルの内容次第で環境負荷が大きく変化します。同社はその事実をいち早く認識し、リサイクルが可能な素材の含有量の増加を実施。環境への影響を抑えています。

    化学メーカー

    ある化学系の企業では、2025年4月より自社製品のLCAデータ(CFPデータ)の公開を開始しました。

    製品Aが製品Bの原料になったり、主製品以外の副製品が同時に生まれたりする化学分野は、LCAの計算が他業界よりも複雑な傾向にあります。それだけに、同社の行動は先進的な取り組みとして高く評価されうるものです。

    LCAにおける課題

    続いて、LCAの導入時に問題となりやすい課題をご紹介します。

    データの収集が困難である

    LCAでは、サプライチェーンまでを含めた膨大なデータが必要とされます。自社単独での取り組みは難しく、取引先の協力も重要です。しかし、特に海外から原材料を仕入れている場合などは、データの提供を受けられなかったり、受け取ったデータの質に問題があったりする場合が少なくありません。

    CO2の算出方法が明確でない

    前述のとおり、LCAはISO規格で定められた評価手法です。しかし、ISOでは具体的な算出方法や分析手順までは明確にされていません。特にCO2をはじめとする環境負荷物質の算出方法が明確でないことは、LCA実施における1つの障害となります。

    評価の客観性・透明性の確保が必要になる

    評価手順が明確でないLCAは、分析過程が妥当なものであるかどうか、すなわち、客観性・透明性のある評価方法かが重要視されます。各業界で信頼されているLCAの規格を採用するなどして事前に調査をすることも必要不可欠です。

    製品・サービスの品質と両立できない場合がある

    ここまでのハードルを乗り越えてLCAを導入し、課題を導き出せた場合でも、残念ながら解決策が見つからない可能性は残ります。製品によっては、質を保ちながら環境負荷を抑える代替案がない場合も存在するためです。

    環境問題への対処と自社製品の魅力の維持という二つの課題の両立について、難しい舵取りを求められるケースもあります。

    CFPやScope3との違い

    最後に、LCAと混同されやすい用語についてご紹介します。

    CFP(カーボンフットプリント)との違い

    CFP(Carbon Footprint of Products:カーボンフットプリント)は、製品がライフサイクルで排出する温室効果ガスの量を、CO2排出量に換算して明らかにする仕組みのことです。LCAと考え方が似ていますが、LCAは温室効果ガス以外のより広範な物質まで評価対象とする点で異なります。

    Scope3との違い

    Scope3とは、GHGプロトコルと呼ばれる温室効果ガス排出量の算定基準に登場する用語です。サプライチェーン内の他社が排出する温室効果ガス量を評価対象としています。LCAは自社の排出量も分析し、温室効果ガス以外も評価対象とする点で異なります。

    LCAは企業による環境戦略でますます必要となる

    LCAは製品のライフサイクルにおける環境負荷を評価する手法です。導入を進めることで、サプライチェーン全体の最適化や、企業としての信頼性向上など、多くの恩恵が得られます。

    一方、評価には膨大なデータの収集・分析が必須であり、また算出方法も厳密に定まっていないなど、LCAの導入にはハードルもあります。導入の際は、LCAの実践を包括的にサポートするパーソルクロステクノロジーの支援サービスをぜひご利用ください。

    サービス:LCA/CFP(製品単位のCO2可視化)

    お急ぎの場合は、フリーダイヤル(0120-450-551
    にてお問い合わせください。

    【受付時間】9:00〜19:00(月〜金) ※土日祝祭日を除く